同じことを繰り返すくらいなら、死んでしまえ。
2026/04/09
夜のコンビニ帰り、少し冷えた風に肩をすくめながら、彼女がぽつりと言った。
「ねえ…ちゃんと通ると思う?」
「何が?」
「ローン。カーマッチのやつ」
彼は少しだけ黙って、街灯の下で立ち止まる。
「正直、わかんない。でもさ…やってみるしかないだろ」
彼女は小さく頷いた。
「前に借金してたことあるしさ、やっぱり不安で」
その言葉に、彼はゆっくり息を吐いた。
「俺だって同じだよ。過去は消えないし」
少しだけ間が空く。遠くで車が通り過ぎる音がした。
「でもさ」
彼は続ける。
「だからこそ、じゃない?人生やり直すっていうか」
「やり直す…か」
「うん。大げさかもしれないけどさ」
彼は笑って、少しだけ照れくさそうに言う。
「車って、ただの移動手段じゃない気がするんだよね」
彼女は横顔のまま聞いている。
「どこでも行けるし、逃げ場にもなるし」
「逆に、前に進むための道具でもあるっていうか」
彼女はふっと笑った。
「なにそれ、ちょっといいこと言ってる」
「だろ?」
「でもさ、もしローン通らなかったらどうする?」
彼は少しだけ考えて、すぐに答えた。
「そしたらまた別の方法考えるよ。頭金増やすとか、中古もっと安いのにするとか」
「諦めないんだ」
「諦めたら終わりだろ」
彼女は立ち止まり、彼の顔を見た。
「なんかさ、それ聞いてちょっと安心した」
「なんで?」
「一人じゃない気がしたから」
彼は少しだけ驚いて、それから笑った。
「当たり前だろ」
コンビニの袋を持ち替えながら、彼は前を向く。
「とりあえずさ、審査出してみよう」
「通るかどうか悩んでる時間、ちょっともったいないし」
彼女もゆっくり歩き出す。
「そうだね。夢ってさ、考えてるだけじゃ進まないもんね」
「お、いいこと言うじゃん」
「でしょ?」
少し先、二人のアパートの明かりが見えてきた。
「もし車持てたらさ」
彼女が言う。
「今度はちゃんと旅行行こうよ」
「いいね。どこ行く?」
「うーん…遠く。今まで行けなかったとこ」
彼は小さく頷く。
「じゃあ、それを目標にしよっか」
夜の静けさの中で、二人の足音がゆっくり重なっていく。
過去は消えない。
でも、それでも前に進むための一歩は、きっと踏み出せる。
その先にある景色を、まだ見ていないだけで。
「同じことを繰り返すくらいなら、死んでしまえ」
岡本 太郎 芸術家・作家/1911~1996
芸術や生き方において“変化し続けること”を重視していた岡本太郎の思想を象徴する発言である。
この言葉は、既成概念や安定にとらわれる生き方を強く否定し、自分を壊してでも新しい表現や価値を生み出すべきだという考えの中で語られたものである。
同じ状態に留まり続けることは、成長を止めることと同じであり、それならば一度壊してでも前に進むべきだ、という強い意思が込められている。
つまりこの言葉は、終わりではなく「変わる覚悟」を促すものであり、新しく生き直すための思想として語られたものである。
変わるなら今しかない。
カーマッチ富山滑川店

