〜お客様と歩んだ、ある一年の記録〜

〜お客様と歩んだ、ある一年の記録〜

滋賀県守山市。琵琶湖の湖岸から少し離れた国道沿いに、その店はある。 「カーマッチ滋賀守山店」。中古車の販売と買取を営むこの店に、今年もまた、様々な事情を抱えた人々が訪れる。

車を探しに来る理由は、人の数だけある。 進学のため、家族のため、仕事のため、あるいは人生をやり直すため。

そして、その一台にたどり着くまでの道のりも、人によって違う。 まとまったお金がすぐに用意できる人もいれば、頭金をこれから貯めようとしている人もいる。 過去にローンの審査で苦労した経験がある人もいる。

守山店のスタッフたちが大切にしているのは、どんな事情のお客様であっても、まずは話を聞くこと。 そのうえで、無理のない支払い方法を一緒に考えること。

この物語は、そんな守山店と、そこに集うお客様たちの、一年間の記録である。


第1章 桜咲く日に

四月最初の週末、守山店の駐車場には満開の桜が数枚、風に舞っていた。展示車の窓ガラスに張りついた花びらを、営業スタッフの山本さくらが箒で払っていると、店の前でバスを降りたばかりの女の子が、地図アプリを片手にきょろきょろと辺りを見回していた。

「あの、カーマッチさんって、ここで合ってますか」

声をかけてきたのは、美咲という十八歳の女の子だった。この春、大学進学のために守山市内で一人暮らしを始めたばかりだという。実家は少し離れた町にあり、電車とバスを乗り継いで通学するには不便な立地だったため、車を持つことにしたのだと、少し緊張した面持ちで話してくれた。

「免許は取ったばかりで……正直、車のことは何もわからなくて」

さくらは美咲を店内に案内し、温かいお茶を出しながら、まずは彼女がどんな生活を送るのか、じっくりと話を聞くことにした。大学までの距離、アルバイト先、休日の過ごし方。車選びは、車種のカタログを眺めることから始まるのではなく、その人の暮らしを知ることから始まる、というのが守山店のやり方だった。

「実は……お金のこと、ちょっと不安で。奨学金もあるし、今はまとまった貯金がなくて」

美咲は俯きがちにそう言った。両親からの援助は多くを望めず、自分のアルバイト代でどうにかしたいという気持ちが強いようだった。頭金として用意できる額は、正直に言うとほとんどない。そのことを切り出すのに、彼女はかなり勇気を使ったようだった。

さくらは大きく頷いた。

「頭金がないからといって、車を諦める必要はありませんよ。守山店では、頭金なしで始められる自社ローンのご相談も受け付けています。まずは無理のない毎月のお支払い額から、一緒に考えていきましょう」

美咲の表情が、目に見えて和らいだ。事前にインターネットで色々と調べていたものの、専門用語が並ぶローンの説明ばかりで、結局何が自分に合っているのか分からなかったのだという。

「難しく考えなくて大丈夫です。美咲さんの今の生活と、これからの予定に合わせて、月々いくらなら無理なく続けられそうか、一緒に紙に書き出してみましょう」

さくらはノートを広げ、アルバイトの収入、大学の交通費、生活費を一つひとつ確認していった。整備士の田中誠一も途中で顔を出し、車の維持費についても丁寧に説明を加えた。ガソリン代、任意保険、車検の目安。若いお客様にはとかく見落とされがちな部分だが、後々「こんなはずじゃなかった」とならないよう、最初にすべて伝えておくことが大切だと田中は考えていた。

「車は買った瞬間がゴールやない。乗り続ける中で、ずっと付き合っていくもんやからな」

田中のその一言に、美咲は真剣な顔で頷いた。

結局その日は契約までには至らなかったが、美咲は「もう少し考えてから、また来ます」と、初めて笑顔を見せて店を後にした。さくらは、彼女が駐車場の桜の下を歩いていく後ろ姿を、しばらく見送っていた。

一週間後、美咲は再び店を訪れ、コンパクトなハッチバックの中古車と、頭金なしで組める自社ローンのプランを選んだ。契約書にサインをする美咲の手は、少し震えていたが、その顔にはこれからの新生活への期待がにじんでいた。

「ありがとうございます。これで、ちゃんと大学に通えます」

さくらは、そのひと言に、この仕事の意味を改めて感じていた。まとまったお金がなくても、諦めずに相談してくれたからこそ、美咲の新生活の一歩を後押しできたのだ。

桜が散り始めた守山の街を、美咲を乗せた白い軽自動車が走り去っていく。それは、この一年間、守山店が見守ることになる、数多くの物語の、ほんの始まりに過ぎなかった。

第2章 息子へ、最後の一台

五月の連休が明けたある日、六十歳を過ぎたばかりの修一が、妻の和子と共に守山店を訪れた。長年、家族で乗り継いできたミニバンを手放し、これからは夫婦二人の暮らしに合った、小回りの利く一台に乗り換えたいという相談だった。

「息子の結婚式が来月にありましてね。それを機に、身の丈に合った暮らしに整えていこうと思って」

修一はそう言って、少し寂しそうに、そして同時にどこか晴れやかな表情を浮かべた。子育てのために選んだ大きな車には、たくさんの思い出が詰まっている。家族旅行、運動会の送り迎え、受験の日の早朝ドライブ。しかし子どもたちはそれぞれ独立し、今では夫婦二人が乗るには広すぎる車になっていた。

対応したのは、店長の黒田健太だった。黒田は修一夫婦の話をじっくりと聞きながら、これまでの車にどんな思い出があったのかを尋ねた。修一は堰を切ったように、子どもたちが小さかった頃の話を始めた。黒田は相槌を打ちながら、時折メモを取り、二人の暮らしぶりを頭の中で整理していった。

「お二人の今の暮らしに合わせるなら、燃費が良くて、駐車もしやすいコンパクトなタイプがおすすめです。ただ、急かさず、ゆっくり選んでいただければと思います」

黒田は数台の候補を提案したが、その日は無理に決めさせるようなことはしなかった。何度か足を運んでもらい、実際に試乗もしてもらいながら、修一と和子が納得できる一台を、時間をかけて一緒に探すことにした。

三度目の来店の際、和子がぽつりと切り出した。

「実は、退職金はまだ整理がついていなくて。支払いの方法について、少し相談してもいいですか」

まとまった資金はあるものの、退職金の受け取りや税金の手続きなどが完了するまでには時間がかかる。今すぐ現金で一括支払いをするのは難しいが、かといって新しい生活のために早く車を用意したい、というのが二人の本音だった。

黒田は穏やかに答えた。

「そういったご事情、よくあります。無理に一括でご用意いただく必要はありません。守山店の自社ローンでしたら、退職金が入るまでの間、月々のお支払いを組みながら、資金の目処が立った時点でまとめて残額をお支払いいただくといった柔軟なご相談も可能です。まずはお二人の今後の資金計画に合わせて、一緒にプランを考えましょう」

修一と和子は顔を見合わせ、安堵の表情を浮かべた。急かされることなく、自分たちのペースで決めさせてもらえたこと、そして支払い方法についても親身に相談に乗ってもらえたことに、二人は深く感謝しているようだった。

最終的に選んだのは、小回りが利き、二人分の荷物がちょうど収まるコンパクトなセダンだった。納車の日、修一は長年乗った大きなミニバンを名残惜しそうに見つめながら、田中整備士に深々と頭を下げた。

「長い間、うちの家族を乗せてくれて、本当にありがとう」

田中は静かに頷き、その車を丁寧に見送った。中古車として次の持ち主に渡るその車もまた、新しい家族の物語を乗せて走っていくことになる。

守山店の駐車場を後にする修一夫婦の新しい車を見送りながら、黒田は改めて思った。車を売るということは、その人の人生の節目に立ち会うということなのだと。

第3章 シングルマザーの決断

草津市内のアパートで、小学三年生の娘と二人で暮らす恵は、長年乗ってきた軽自動車の調子が悪くなり、買い替えを検討していた。パート勤めの収入だけで生活を支える恵にとって、車は生活必需品であると同時に、家計への影響を考えると簡単には決められない大きな買い物でもあった。

守山店を訪れた恵を出迎えたのは、事務の中村結衣だった。中村は普段、受付や書類関係の業務を担当しているが、金銭面の相談に丁寧に寄り添うことに定評があり、この日はさくらと共に恵の対応にあたった。

「正直に言うと、頭金なんて全然用意できていなくて。それでも大丈夫でしょうか」

恵は最初、申し訳なさそうに切り出した。過去に一度、別の販売店でローンの審査について厳しいことを言われた経験があり、車探しそのものに苦手意識を持っていたのだという。

中村は恵の表情から、その不安の大きさを感じ取った。

「頭金がないことは、決して珍しいことではありません。まずは恵さんの毎月の収支を、一緒に整理させていただけますか。無理のない範囲で、お子さんとの生活に負担がかからないプランを一緒に考えていきましょう」

中村は家計簿のような形式の用紙を用意し、恵と一緒に月々の収入と支出を丁寧に書き出していった。学校関係の費用、光熱費、食費。その中で、車にかけられる金額がどのくらいかを、恵自身にも見えるようにしていく。

「恵さんのお仕事や生活スタイルを踏まえると、このくらいの月々のお支払いであれば、無理のない範囲かと思います。守山店の自社ローンでは、頭金なしからでもご相談いただけますので、まずはこのプランで具体的に進めてみませんか」

恵は用紙に書かれた数字を何度も見つめ、ようやく肩の力を抜いたようだった。

「安心しました……。実は、前に別のお店で審査に落ちたことがあって、それがずっと引っかかっていたんです」

中村は優しく答えた。

「お一人おひとり、事情は違いますから。まずは実際にご相談いただくことが大切です。私たちも、無理なお願いをするようなことはいたしません」

車選びにおいても、恵が最も重視したのは安全性だった。娘を乗せて走ることが多いため、衝突安全性能や、雨の日でも視界を確保しやすい機能を優先したいという。さくらは恵の希望を丁寧に聞き取りながら、予算内でそれらの条件を満たす数台の候補を提案した。

最終的に恵が選んだのは、コンパクトながら安全装備が充実したミニバンタイプの中古車だった。契約を終えた恵は、店を出る前にさくらと中村に深々と頭を下げた。

「本当にありがとうございました。娘を安心して乗せられる車が見つかって、肩の荷が下りました」

数週間後、恵から一枚のはがきが店に届いた。娘と一緒に琵琶湖畔までドライブに出かけた時の写真が添えられており、「新しい車のおかげで、休日の楽しみが増えました」という言葉が綴られていた。

さくらと中村は、そのはがきを事務所の壁に貼り、来店するお客様たちにもその温かい報告を伝えることにした。頭金がないという理由だけで、車を諦めなくていい。それを実感してもらえた恵の姿は、二人にとって何よりの励みになった。

第4章 農家の相棒

梅雨入り前のある朝、東近江市で先祖代々の田畑を守る若手農家の拓也が、泥だらけの長靴のまま守山店に姿を現した。長年使ってきた軽トラックがついに寿命を迎え、次の田植えのシーズンに間に合うよう、急いで代わりの一台を探しているという。

対応したのは整備士の田中誠一だった。田中は元々農家の生まれで、軽トラックの構造や使われ方には人一倍詳しく、拓也の相談にはうってつけの人物だった。

「軽トラは見た目は似とっても、使い方でだいぶ痛み方が違うんや。荷台に何を積むことが多いんか、教えてくれるか」

拓也は肥料の袋や収穫した野菜、時には農機具そのものを積むことも多いと話した。田中は展示場に並ぶ数台の軽トラックを一台ずつ見て回りながら、荷台の耐荷重や、四輪駆動の有無、過去の点検記録を丁寧に説明していった。

「見た目のきれいさより、中身が大事や。特に下回りの錆び具合と、足回りの状態はワシがちゃんと見といたから安心してくれ」

拓也は田中の説明に何度も頷きながら、次第に表情を緩めていった。実は今回、農閑期に差し掛かる直前で手元の資金に余裕がなく、車の購入資金をどう工面するか頭を悩ませていたのだという。

「実は……今すぐまとまったお金を用意するのは正直厳しくて。かといって、田植えに間に合わせたくて焦ってるんです」

田中はその場で黒田店長を呼び、資金面の相談に応じることにした。黒田は拓也の事情を聞き、農業を営む方特有の収入サイクル、つまり収穫期にまとまった収入が入る一方で、それ以外の時期は資金繰りが厳しくなりやすいという点を踏まえて提案した。

「農業を営まれている方は、季節によって収入の波が大きいですよね。守山店の自社ローンでは、頭金なしからのご相談はもちろん、お客様の収入のタイミングに合わせた無理のない支払い計画についても、柔軟にご相談いただけます。まずは拓也さんの一年の収支の流れを聞かせてもらえますか」

拓也は少し驚いた様子だったが、今まで別の店で「決まった条件でしか組めない」と断られた経験があったため、この提案に安堵の表情を浮かべた。

「そんな相談の仕方があるなんて、知りませんでした。うちみたいな農家には本当に助かります」

田中と黒田は、拓也の一年の収入サイクルを確認しながら、収穫期に支払いを厚くし、閑散期は負担を軽くするような無理のないプランを一緒に組み立てていった。

数日後、整備を終えた軽トラックが拓也の元へ納車された。荷台には既に肥料の袋が積み込まれ、拓也は嬉しそうにエンジンをかけた。

「この音、やっぱりええな」

田中はその様子を見て、満足そうに頷いた。

「大事に使ってな。何かあったら、いつでも持ってきてくれ」

それから数ヶ月後、実りの季節を迎えた田んぼの脇に停まった軽トラックの荷台には、黄金色に実った稲穂が山のように積まれていた。拓也から届いた新米の差し入れを、守山店のスタッフたちは笑顔で分け合った。車という道具が、誰かの生活を、暮らしを、そして実りを支えている。そのことを、スタッフ全員が改めて実感する出来事だった。

第5章 車椅子のふたり

梅雨の合間の晴れた日、守山店の駐車場に一台のタクシーが停まり、車椅子に乗った青年・翔と、その隣に寄り添う恋人の愛が降りてきた。翔は一年前の交通事故で足に障害を負い、それ以来、外出には車椅子が欠かせない生活を送っていた。

「福祉車両というものを、初めて真剣に検討していて。何もわからないので、一から教えてください」

翔は少し緊張した面持ちでそう切り出した。愛が隣でそっと彼の肩に手を添える。二人にとって、この車選びは単なる買い物ではなく、これからの生活そのものを左右する、大きな決断だった。

対応したのは黒田店長だった。黒田は福祉車両の知識について事前に社内研修で学んだ内容を踏まえ、車椅子のまま乗り込めるスロープタイプや、助手席が回転してスムーズに乗り移れるタイプなど、いくつかの選択肢を丁寧に説明した。

「まずは、翔さんが普段どんな動作をされているか、実際に見せていただいてもよろしいですか。車椅子の乗り移りのしやすさは、実際に試していただくのが一番です」

黒田はそう言うと、展示場にある福祉車両のデモ車を用意し、翔に実際に試してもらうことにした。愛が翔の車椅子を押し、田中も駆けつけて、車椅子の固定金具の使い勝手や、スロープの角度について細かく確認していく。

「これなら、一人でも乗り降りがしやすいかもしれない」

翔がぽつりと呟いた言葉に、愛の顔がぱっと明るくなった。彼女はこれまで、外出のたびに翔の乗り降りを手伝ってきたが、翔自身が少しでも自分の力でできることが増えれば、と願っていたのだった。

しかし、福祉車両は一般的な車両に比べて費用がかさむことが多い。翔は事故の後遺症により以前のように働けなくなり、収入面での不安も大きかった。

「正直、まとまったお金を用意するのは難しくて……。それに、こういう車を買うこと自体、初めてで不安なんです」

黒田は深く頷き、静かに語りかけた。

「大きな決断をされる時こそ、無理のない支払い方法を一緒に考えることが大切だと思います。頭金がなくても、福祉車両の購入をあきらめる必要はありません。守山店の自社ローンでは、翔さんの今の収入状況に合わせて、月々の負担を抑えたプランをご提案することもできます。まずはお二人が安心して新しい生活を始められることを、一番に考えましょう」

翔と愛は顔を見合わせ、深く息をついた。これまで、福祉車両を扱う店をいくつか回ったが、車の機能面の説明ばかりで、支払いに関する不安に寄り添ってくれる店には出会えていなかったのだという。

「ちゃんと話を聞いてもらえて、なんだか救われた気持ちです」

愛が目に涙を浮かべながらそう言うと、翔も静かに頷いた。

数週間後、翔にぴったり合うよう改造されたスロープ付きの福祉車両が納車された。田中が丁寧に操作方法を説明し、翔自身がスロープを使って車椅子ごと乗り込む練習を、店の駐車場で何度も繰り返した。

「これで、二人でどこへでも行けるね」

愛のその言葉に、翔は誇らしげな笑顔を見せた。守山店の駐車場に差し込む初夏の光が、二人の新しい門出をそっと照らしていた。

第6章 梅雨の日の再会

雨が続くある日、傘を差した一人の女性が守山店の自動ドアをくぐった。その顔に、さくらは見覚えがあった。

「もしかして、久美子さん……ですよね」

数年前、久美子は亡くなった父親が乗っていた古い車の売却で、この店を訪れたことがあった。当時はまだ入社したばかりだったさくらが対応し、父親との思い出が詰まった車を手放す久美子の複雑な胸中に寄り添いながら、査定と手続きを進めた記憶が鮮明に残っていた。

「覚えていてくれたんですね。あの時は本当にお世話になりました」

久美子は懐かしそうに微笑んだ。今日訪れた理由は、当時とは違い、今度は自分自身の車を新しく購入するためだった。長年勤めた会社を辞め、フリーランスとして働き始めた久美子は、これまで電車移動が中心だった生活から、車での移動を前提とした働き方に切り替えようとしていた。

「独立してから、収入が正直まだ安定していなくて。会社員の頃のように、簡単に審査が通るか不安なんです」

久美子はそう打ち明けた。フリーランスという働き方は自由な反面、収入の証明のしやすさという点で、ローンの審査において不利になりがちだという不安を抱えている人は少なくない。さくらはその不安をしっかりと受け止めた。

「久美子さんのように、独立されたばかりで収入がまだ安定していない方からのご相談も、実はとても多いんです。守山店の自社ローンでは、会社員の方に限らず、フリーランスや個人事業主の方の状況に合わせて、無理のない支払いプランをご相談いただけます。まずは今の収入状況を、詳しく聞かせてもらえますか」

久美子は現在の仕事内容や、今後の見込み収入について丁寧に説明した。さくらはそれを踏まえ、月々の支払い額を控えめに設定しつつ、収入が安定してきた際には柔軟にプランを見直せるような提案を行った。

「まずは無理のない金額からスタートして、状況が変わったタイミングでまたご相談いただければ、支払い方法を見直すこともできます。焦らず、久美子さんのペースで進めていきましょう」

久美子は安堵の表情を浮かべ、当時父親の車を手放した時のことを振り返りながら、こう続けた。

「あの時、父の車を丁寧に扱ってくださったのが、今でも忘れられなくて。だから今度、自分の車を選ぶ時も、絶対にこのお店に来ようと決めていたんです」

さくらはその言葉に胸が熱くなった。一台の車との別れが、巡り巡って新しい出会いにつながっている。その事実に、改めてこの仕事の意味を感じずにはいられなかった。

車選びの過程では、田中整備士も久美子の新しい働き方に合わせたアドバイスを加えた。長距離の移動が増えることを見越して、燃費性能や、長時間運転時の疲労を軽減する装備についても細かく説明した。

数週間後、久美子は自分名義の初めての車の納車を迎えた。運転席に座り、シートベルトを締める久美子の姿を見ながら、さくらは静かに声をかけた。

「これから、久美子さんの新しい仕事人生を、この車が支えてくれますように」

雨上がりの空に虹がかかる中、久美子を乗せた車が守山店の駐車場から静かに走り出していった。

第7章 夏祭りと兄弟

夏の盛り、蝉の声が店の外まで響く頃、兄の健と弟の大輔が、少し気まずそうな空気を纏いながら守山店にやってきた。二人は半年前に亡くなった父親が大切にしていた古い車の処分について相談に来たのだった。

「正直、この車をどうするかで、俺たち兄弟、ずっと揉めてたんです」

兄の健がため息交じりにそう切り出した。父親が生前、休みの日に丁寧に手入れをしていた愛車だったが、兄は「もう手放すべきだ」と考え、弟の大輔は「父の形見だから手放したくない」と主張し、二人の意見は平行線をたどっていたのだという。

対応した田中整備士は、まずその車をじっくりと見せてもらうことにした。ボンネットを開け、エンジンルームを確認し、シートの座り心地や、ハンドルの握り具合まで丁寧に見ていく。

「これは、よう手入れされとる車やな。オイル交換の跡もきれいやし、下回りの錆もほとんどない。相当大事にされてたんやろう」

田中のその言葉に、大輔の表情が少し和らいだ。

「そうなんです。父はこの車を、本当に大事にしていて……」

田中は静かに続けた。

「車を手放すことは、決して思い出を捨てることやない。次に大事にしてくれる誰かのところへ、丁寧に引き継ぐことなんや。この車がこれからも誰かの生活を支えていく、そう考えたら、悪いことばかりやないんちゃうか」

その言葉に、健と大輔は顔を見合わせた。田中は続けて、この車の査定額や、状態の良さを踏まえた買取の提案を丁寧に説明した。同時に、健が新しく自分の車を購入したいという話にも話題が及んだ。健は結婚を機に、通勤に使う車を探しているところだったのだ。

「実は、結婚式の費用もあって、頭金にまわせるお金があまりなくて」

健が申し訳なさそうに話すと、対応していた黒田店長が穏やかに答えた。

「結婚式や新生活の準備で出費がかさむ時期ですよね。そういったタイミングでのご相談は、決して珍しくありません。守山店の自社ローンは頭金なしからでもご相談いただけますので、まずは健さんの今の状況に合わせた無理のないプランを一緒に考えましょう」

健はほっとした様子で頷いた。父親の車を手放すことへの複雑な思いと、新生活への期待が入り混じった表情だった。

夏祭りが行われる週末、田中の提案で、健と大輔は父親の車で最後に一度、二人で祭り会場まで走ってみることにした。助手席に座った大輔が、ふと呟いた。

「お父さん、この車で毎年、俺たちを祭りに連れて行ってくれたよな」

健は黙って頷きながら、ハンドルを握った。夕暮れの空の下、二人を乗せた車は、思い出の道を静かに走り抜けた。

数日後、健は新しい車の契約のために店を訪れ、大輔もその様子を見守った。田中が用意した書類には、父親の車がこれから新しい持ち主のもとで大切にされることを示す買取証明も添えられていた。

「父さんの車、ちゃんと次の人にも大事にしてもらえそうだな」

大輔のその言葉に、健は静かに微笑んだ。守山店の店内には、夏祭りの提灯の灯りが、窓越しにぼんやりと差し込んでいた。

第8章 転勤族の妻

秋の気配が漂い始めた九月、夫の転勤で滋賀に越してきたばかりの由美が、不安げな表情で守山店を訪れた。これまで暮らしていた都市部では公共交通機関が発達しており、車を持たない生活を送ってきたが、守山に来てからは駅からの距離や周辺の環境を考えると、車が生活の必需品になることに気づいたのだという。

「土地勘が全くなくて、正直どこで何を探せばいいのかも分からない状態なんです」

由美はそう話しながら、スマートフォンの地図アプリを開いて見せた。子どもの保育園への送り迎え、日々の買い物、夫の急な出張時の駅までの送迎など、慣れない土地での新生活に、由美は少なからず不安を感じていた。

対応したのは山本さくらだった。さくらは守山市で生まれ育ったこともあり、地域の道路事情や、季節ごとの気候の特徴についても詳しかった。

「由美さんが住まれているエリアだと、冬場は積雪こそ少ないですが、朝晩の冷え込みで路面が凍結することもあるので、その点も踏まえて車種を選ぶと安心です。保育園への送り迎えなら、視界が広くて取り回しのしやすいコンパクトなタイプがおすすめですよ」

さくらは地図を広げながら、由美の新しい生活圏における主要な道路や、混雑しやすい時間帯についても丁寧に説明した。土地勘のない由美にとって、こうした地域に根差した情報はとても心強いものだった。

「本当に助かります。まだ知り合いも少なくて、こういう相談ができる場所があるだけで、すごく安心します」

由美はそう言って、少し肩の力を抜いたようだった。

車選びが進む中で、由美は支払い方法についても相談を持ちかけた。転勤に伴う引っ越し費用や、新居の初期費用でまとまった支出が続いており、車のためにすぐに大きな頭金を用意するのは難しい状況だったのだ。

「引っ越しでかなり出費がかさんでしまって……。車も必要なんですが、正直、資金に余裕がなくて」

さくらは頷きながら答えた。

「転勤に伴うタイミングでのご相談は、実はとても多いんです。守山店の自社ローンでしたら、頭金なしからでもご相談いただけますので、まずは今の家計の状況に合わせて、無理のない月々のお支払いプランを一緒に考えましょう」

由美は安堵した様子で、さくらの提案に耳を傾けた。夫とも相談しながら、無理のない範囲で車を選んでいくことになった。

数週間後、由美は保育園の送り迎えにちょうど良いサイズのコンパクトカーを購入し、納車の日には子どもと一緒に店を訪れた。子どもがチャイルドシートに座る様子を見ながら、さくらは丁寧にシートベルトの締め方や、チャイルドシートの固定方法を説明した。

「これで、保育園への送り迎えも安心してできます。守山の道にもだんだん慣れてきましたし、この車があれば、もっと色々な場所に行けそうです」

由美の言葉に、さくらは笑顔で頷いた。

「何か困ったことがあれば、いつでもお店に相談に来てくださいね。地域のことなら、私たちが力になれると思います」

秋の澄んだ空の下、由美と子どもを乗せた新しい車が、慣れない道を少しずつ、しかし確かな足取りで走り始めていた。

第9章 還暦のドライブ

十月のある日、還暦を迎えたばかりの敏夫が、少し気恥ずかしそうな様子で守山店を訪れた。長年、中学校の教師として勤め上げ、この春に定年を迎えたばかりだという敏夫は、退職を機に、これまでできなかったことに挑戦したいという想いを抱えていた。

「実は、教え子たちと約束していたことがありまして。還暦になったら、みんなで滋賀県を一周するツーリングをしよう、と」

敏夫は照れくさそうに笑いながら、その経緯を話してくれた。担任をしていたクラスの教え子たちが、今では立派な社会人となり、恩師の還暦を祝う会を企画してくれたのだという。その集まりの中で、教え子の一人が「先生、また昔みたいに車を運転して、みんなで走りましょうよ」と声をかけたことがきっかけで、敏夫は久しぶりに自分の車を持つことを決意したのだった。

対応した黒田店長は、敏夫の話に耳を傾けながら、彼がどのような運転を想定しているのかを丁寧に聞き取った。長距離のドライブが多くなること、教え子たちと一緒に出かける機会が増えること、そして何より、これからの人生を楽しむための一台を探しているという敏夫の想いを、黒田はしっかりと受け止めた。

「長年、生徒さんたちのために尽力されてきたんですね。これからは、ご自身の楽しみのための時間を、たっぷり過ごしていただきたいです」

黒田のその言葉に、敏夫は目を細めた。

車選びにおいて敏夫が重視したのは、長距離運転でも疲れにくい座席の座り心地と、燃費の良さだった。田中整備士も同席し、実際に敏夫に運転席に座ってもらいながら、視界の広さやハンドルの操作感を確認していった。

「長距離を走るなら、こういう部分が地味に効いてくるんや。試乗して、自分の体に合うかどうか、しっかり確かめてな」

田中の丁寧なアドバイスを受けながら、敏夫は数台を試乗し、最終的にセダンタイプの一台に心を決めた。

支払いについて話が及んだ時、敏夫は少し困ったような表情を見せた。

「退職金はまだ手続き中で、来月にならないと受け取れないんです。それまでの間、どうしたものかと」

黒田は落ち着いた様子で答えた。

「退職金のお手続き中というタイミングでのご相談は、よくあることです。守山店の自社ローンでしたら、退職金が入るまでの間は月々のお支払いで対応いただき、資金が整った段階で残額をまとめてお支払いいただくといった柔軟な形もご相談可能です。敏夫さんのご都合に合わせて、無理のない形を一緒に考えましょう」

敏夫は安堵の表情を浮かべ、「これで、教え子たちとの約束を守れそうです」と嬉しそうに話した。

納車の日、敏夫は真新しいセダンに乗り込み、エンジンをかけた。助手席には、還暦祝いの会で教え子たちからもらった手紙が丁寧に置かれていた。

「先生、これから第二の人生、楽しんでくださいね」

その手紙の一節を思い出しながら、敏夫は守山店の駐車場を後にした。秋晴れの空の下、教え子たちとの再会に向けて、敏夫の新しいドライブが始まろうとしていた。

第10章 初任給の日

十一月、社会人一年目を迎えたばかりの大介が、少し緊張した面持ちで守山店の自動ドアをくぐった。地元の企業に就職し、初めての給料を手にしたばかりの大介は、実は以前、母親と一緒にこの店を訪れたことがあった。

「あの時は、母がお世話になりました。今日は、僕自身の車のことで相談したくて」

大介がそう言うと、対応した中村結衣も、その記憶がすぐに蘇った。就職活動の時期、母親と共に店を訪れ、初めての車の相談をしていた大介の姿は、まだ学生の面影が残るものだった。それから半年余りで、大介はすっかり社会人らしい落ち着きを身につけていた。

「初めてのお給料で、家族に何か恩返しがしたくて。でも、車を買うとなると、初任給だけじゃとても足りないですよね」

大介は少し不安げに切り出した。社会人になったばかりで貯蓄はまだ少なく、頭金として用意できる金額も限られていた。

中村は大介の話をじっくりと聞きながら、彼の今の収入と、これからの生活設計について丁寧に確認していった。

「大介さんの今のお給料と、これからの生活費を踏まえると、無理のない範囲で組めるプランがあります。頭金についても、今すぐ大きな金額を用意する必要はありません。守山店の自社ローンは頭金なしからでもご相談いただけますので、まずは月々どのくらいなら無理なく続けられそうか、一緒に確認しましょう」

大介はほっとした表情で頷いた。社会人になったばかりで、金融機関のローン審査についても漠然とした不安を抱いていたが、中村の丁寧な説明を聞くうちに、少しずつその不安が和らいでいくのが分かった。

車選びの過程では、通勤に使うための燃費の良さと、休日に家族を乗せて出かけられる十分な座席数を重視した。山本さくらも同席し、大介の職場までの距離や、通勤時間帯の道路状況を踏まえて、いくつかの候補を提案した。

「実は、この車で母を色々な場所に連れて行ってあげたくて。今まで、なかなか旅行にも連れて行けなかったので」

大介のその言葉に、さくらは温かい気持ちになった。以前、母親が息子のためにと必死に予算を工面していた姿を思い出しながら、今度は息子がその母親のために車を選んでいる。その巡り合わせに、さくらは胸が熱くなるのを感じた。

契約の日、大介は母親と共に店を訪れた。母親は感慨深そうに息子の姿を見つめていた。

「まさか、この子が自分の力で車を選ぶ日が来るなんてね」

母親のその言葉に、大介は少し照れくさそうに笑った。

「これからは、僕が母さんを乗せていくから」

納車の日、大介は真新しい車のハンドルを握り、まず最初に向かった先は、母親がかつて行きたいと話していた琵琶湖畔の温泉施設だった。助手席に座る母親の嬉しそうな横顔を横目に、大介は少し緊張しながらも、しっかりとハンドルを握りしめていた。

冬の入り口の澄んだ空気の中、二人を乗せた車が、守山の街を静かに走り抜けていった。

第11章 事故を乗り越えて

十二月に入ったばかりのある日、主婦の智子が、夫に付き添われるようにして守山店を訪れた。数ヶ月前に遭遇した交通事故で愛車を失って以来、智子は運転そのものに強い恐怖心を抱くようになっていた。

「本当は、もう運転なんてしたくないんです。でも、子どもの送り迎えや買い物のことを考えると、車がないと生活が回らなくて……」

智子は俯きがちにそう話した。事故の記憶がまだ鮮明に残っており、車のエンジン音を聞くだけで手が震えることもあるという。それでも、家族のために、もう一度運転席に座る決意をしなければならない状況に追い込まれていた。

対応したのは黒田店長だった。黒田は智子の話をじっくりと聞きながら、無理に車選びを進めるのではなく、まずは智子の不安な気持ちに寄り添うことを最優先に考えた。

「事故のご経験があると、車に対して怖さを感じるのは、当然のことだと思います。今日は無理に車を決める必要はありません。まずは智子さんが少しでも安心できるお話ができればと思います」

黒田はそう言うと、智子に事故の状況を無理のない範囲で話してもらいながら、どのような点に不安を感じているのかを丁寧に聞き取っていった。夜間の運転が怖い、交差点での右折が不安、後方の確認に自信が持てない。智子が語る不安は、事故を経験した人にとってはごく自然な感情だった。

「でしたら、衝突を未然に防ぐ安全支援機能が充実した車を、一緒に見ていきましょう。今の車には、後方の確認をサポートする機能や、万が一の際にブレーキを補助してくれる機能など、智子さんの不安を和らげる装備がたくさんあります」

黒田は田中整備士と共に、実際にいくつかの安全装備を智子に体験してもらうことにした。バックモニターの映像、駐車時の衝突防止センサーの警告音。智子は最初こそ緊張した様子だったが、実際に装備の働きを目の当たりにするうちに、少しずつ表情が和らいでいった。

「こんなに助けてくれる機能があるんですね。知らなかったです」

智子の夫も、隣で安堵した表情を浮かべていた。

支払いについて話が及んだ際、智子の夫が申し訳なさそうに切り出した。

「事故の保険金は入りましたが、修理や生活の立て直しで、思ったより手元に残らなくて。頭金として用意できる金額が、かなり限られてしまって」

黒田は落ち着いた口調で答えた。

「事故の後というのは、想定外の出費が重なるものです。守山店の自社ローンは頭金なしからでもご相談いただけますので、まずはご家庭の状況に合わせた無理のないプランを一緒に考えましょう」

夫婦は顔を見合わせ、深く安堵した様子だった。

数週間後、智子は安全装備が充実したコンパクトなミニバンの納車を迎えた。田中が丁寧に操作方法を説明し、智子自身が実際に店の駐車場で何度も運転の練習を重ねた。

「最初は怖かったですが、この車になら、もう一度頑張れそうな気がします」

智子のその言葉に、黒田は静かに頷いた。

「何かご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。智子さんのペースで、少しずつ慣れていってくださいね」

冬の澄んだ空気の中、智子を乗せた車が、ゆっくりとした速度で、しかし確かな足取りで、守山の街を走り始めていた。

第12章 異国からの家族

年の瀬が近づく頃、仕事で来日した技術者のカルロスが、妻と幼い息子と共に守山店を訪れた。カルロスはブラジル出身で、県内の製造業の工場で技術指導にあたるため、家族で来日したばかりだった。

「日本語は、まだあまり上手ではありません。でも、家族のために、車がどうしても必要なんです」

カルロスは辿々しい日本語で、身振り手振りを交えながら懸命に事情を説明した。工場までの通勤に加え、息子の通う日本語補習校への送り迎え、そして休日に家族で滋賀県内を巡ってみたいという願いも抱いていた。

対応した山本さくらは、簡単な言葉を選びながら、ゆっくりと丁寧に話すことを心がけた。専門用語をできるだけ避け、身振りや図を交えながら、カルロス一家に伝わるよう工夫を重ねた。

「大丈夫ですよ。ゆっくり、一緒に確認していきましょう」

さくらはタブレット端末で翻訳アプリを活用しながら、カルロスの家族構成や、日本での生活スタイルについて丁寧にヒアリングを進めた。工場までの通勤距離、息子の学校の場所、そして家族で出かける際に必要な座席数。カルロスの妻も加わり、身振り手振りを交えながら、家族の希望を伝えてくれた。

「日本の車は、みんな性能が良いと聞いています。ただ、正直、日本のローンの仕組みがよく分からなくて、不安があります」

カルロスはそう率直に打ち明けた。海外からの赴任者にとって、日本の金融機関のローン審査は、言語の壁や在留資格の関係で、想像以上にハードルが高く感じられることが少なくない。

さくらはその不安をしっかりと受け止め、丁寧に説明を続けた。

「カルロスさんのように、海外から来られたばかりの方からのご相談も、実はこれまで何度もありました。守山店の自社ローンでは、日本での在留期間や、お仕事の状況を踏まえたうえで、無理のないお支払いプランをご提案することができます。まずは今の状況を詳しく聞かせていただけますか」

カルロスは驚いた様子で、何度も頷いた。以前訪れた別の店では、日本語でのやり取りが難しいという理由だけで、十分な説明を受けられずに帰ってきた経験があったのだという。

「ちゃんと話を聞いてもらえて、本当に嬉しいです。これで、家族みんなが安心して生活できます」

車選びの過程では、田中整備士も加わり、チャイルドシートの取り付け方法や、日本特有の道路標識の意味についても、簡単な英語を交えながら説明を行った。息子は展示車のハンドルを触りながら、目を輝かせていた。

最終的に、カルロス一家は家族全員が快適に乗れるミニバンタイプの中古車を選んだ。契約の際には、通訳アプリを活用しながら、契約内容を一つひとつ丁寧に確認していった。

納車の日、カルロスは家族を乗せて、店の駐車場から静かに車を発進させた。助手席の妻が、後部座席の息子を振り返りながら、嬉しそうに何かを話しかけている様子が見えた。

「ありがとうございました。これから、家族で滋賀県をたくさん探検します」

カルロスのその言葉に、さくらと田中は温かい笑顔で手を振った。異国の地で新しい生活を始める家族の門出を、守山店のスタッフたちは静かに見送っていた。

第13章 反抗期の父と娘

年明け早々、免許を取ったばかりの高校生の娘・杏と、心配性な父親の秀樹が、少しぎくしゃくとした空気を纏いながら守山店を訪れた。

「娘が車を欲しがっているんですが、正直、まだ早いんじゃないかと思っていて」

秀樹は開口一番、そう切り出した。杏は隣で、不満げに唇を尖らせている。高校卒業を控え、進学先の大学に近い場所で一人暮らしを始める予定の杏は、大学生活のために早めに運転に慣れておきたいと考えていた。一方、秀樹は娘がまだ十分な運転経験を積んでいないことへの不安が拭えずにいた。

対応した黒田店長は、二人の間に漂う緊張した空気を感じ取りながら、まずはそれぞれの意見をじっくりと聞くことにした。

「杏さんは、どうして今のタイミングで車が必要だと思われたんですか」

黒田がそう尋ねると、杏は少し勢い込んで話し始めた。

「大学の周りは電車の本数が少なくて、車がないとアルバイトにも行けないんです。それに、今のうちから運転に慣れておかないと、社会人になってから困ると思うし」

秀樹はその話を聞きながらも、まだ納得しきれない様子で口を挟んだ。

「気持ちは分かるが、免許取り立てで、いきなり一人暮らしの土地で運転するのは、やっぱり心配なんだ」

黒田は二人の意見に丁寧に耳を傾けながら、双方が納得できる着地点を探ることにした。

「お二人のお気持ち、どちらもよく分かります。杏さんの将来を見据えた気持ちも、秀樹さんの安全を思う気持ちも、根っこは同じところにあると思うんです。であれば、まずは安全性能が充実した車を選んだうえで、納車前にしっかりと練習する期間を設けるというのはいかがでしょうか」

黒田の提案に、田中整備士も加わった。田中は杏に、実際に運転席に座ってもらいながら、車両の死角や、初心者が特に注意すべきポイントについて、丁寧に説明を行った。

「若いうちは、どうしても運転に自信を持ちすぎてしまうこともある。でも、車ってのは慣れてきた頃が一番危ないんや。焦らず、少しずつ慣れていくことが大事やで」

田中のその言葉に、杏は神妙な面持ちで頷いた。秀樹も、田中の説明を聞きながら、少しずつ表情を和らげていった。

車選びが進む中、支払いについての相談にも話が及んだ。秀樹は娘の大学進学の費用と重なり、車の頭金にまとまった資金を割くのが難しい状況だった。

「大学の入学金や、一人暮らしの初期費用も重なって、正直、車にかけられる予算があまり残っていなくて」

黒田は落ち着いた様子で答えた。

「進学のタイミングと重なると、どうしても出費がかさみますよね。守山店の自社ローンでしたら、頭金なしからでもご相談いただけますので、無理のない範囲で進めていきましょう」

秀樹はほっとした表情を浮かべ、杏も嬉しそうに父親の顔を見た。

最終的に、二人は安全装備が充実したコンパクトカーを選び、納車までの間、杏は田中の指導のもと、店の駐車場で何度も運転の練習を重ねた。

納車の日、秀樹は杏の運転する助手席に乗り込み、少し緊張した面持ちでシートベルトを締めた。

「気をつけてな。でも、お前ならきっと大丈夫だ」

父のその言葉に、杏は照れくさそうに、しかし誇らしげに頷いた。冬の澄んだ青空の下、親子を乗せた車が、ゆっくりと守山の街を走り出していった。

第14章 もう一度、ふたりで

二月のある寒い日、熟年夫婦の和夫と節子が、少し距離を感じさせる様子で守山店を訪れた。二人は結婚三十年を超えるが、ここ数年、互いの会話が減り、一時は離婚も考えたことがあるという複雑な事情を抱えていた。

「長年連れ添った車がついに寿命を迎えまして。買い替えを機に、もう一度、夫婦のこれからについても考え直したいと思っているんです」

節子がそう静かに切り出した。和夫は隣で、少し気まずそうに視線を落としていた。

対応した中村結衣は、二人の間に流れる微妙な空気を感じ取りながらも、あくまで自然体で、車選びの話を進めていくことにした。

「これから、お二人はどんな風に車を使っていきたいと考えていらっしゃいますか」

中村がそう尋ねると、和夫が少し戸惑いながら口を開いた。

「正直、最近は必要最低限の外出にしか使っていなかったんです。でも、そろそろ、また二人で旅行にでも出かけようかと話していて」

節子もその言葉に、小さく頷いた。子どもたちが独立し、夫婦二人だけの時間が増えたことで、これまで後回しにしてきた「夫婦の時間」を見つめ直したいという気持ちが、二人の中に芽生え始めていたのだった。

中村は、二人がこれから始めようとしている新しい生活に寄り添うように、車選びを進めていった。長距離のドライブでも疲れにくいシートの座り心地、荷物を積みやすいラゲッジスペース、そして二人で会話を楽しみながらドライブできる、落ち着いた車内空間。

試乗の際、和夫と節子は久しぶりに二人きりで車に乗り込んだ。エンジンをかけ、ゆっくりと店の周辺を走る中、節子がぽつりと呟いた。

「そういえば、結婚したばかりの頃も、こうやって二人でドライブに出かけたよね」

和夫は少し驚いたように節子を見つめ、静かに頷いた。

「ああ……そうだったな。すっかり忘れていたよ」

試乗を終えて店に戻った二人の表情は、来店した時よりも幾分か和らいでいるように見えた。

支払いについての相談では、節子が率直に切り出した。

「正直、長年専業主婦をしてきたので、私名義でのローンの審査が通るのか、不安に思っていて」

中村は丁寧に答えた。

「ご夫婦での収入状況を踏まえたご相談も、もちろん可能です。守山店の自社ローンでは、それぞれのご家庭の事情に合わせて、無理のない形をご提案しています。まずはお二人の状況を詳しく聞かせていただけますか」

和夫と節子は顔を見合わせ、これまでの生活について改めて話し合いながら、無理のない支払いプランを一緒に組み立てていった。

数週間後、二人は落ち着いた色合いのステーションワゴンの納車を迎えた。納車の日、和夫は運転席に座り、節子は助手席に腰を下ろした。

「久しぶりに、どこか遠くまでドライブに行こうか」

和夫のその言葉に、節子は柔らかく微笑んだ。

「そうね。今度は、若い頃に行った海沿いの町にでも、行ってみましょうか」

早春の冷たい風が吹く中、二人を乗せた車が、静かに、しかし確かな絆を取り戻しながら、守山の街を後にしていった。

第15章 雪の日の贈り物

翌年の一月、珍しく雪がちらつく守山の街に、一台の白い軽自動車が店の駐車場に滑り込んできた。降りてきたのは、一年前の桜の季節にこの店を訪れた、あの美咲だった。

「お久しぶりです。覚えてますか、去年、頭金なしでこの店に相談に来た美咲です」

対応した山本さくらは、すぐにその顔を思い出した。あの日、緊張した面持ちで店を訪れた美咲は、この一年ですっかり大学生活に馴染んだ様子で、以前よりも一回り大人びた表情を浮かべていた。

「もちろん覚えていますよ。大学生活はどうですか」

さくらがそう尋ねると、美咲は嬉しそうに近況を話し始めた。あの日購入したコンパクトカーのおかげで、アルバイトと学業を無理なく両立できていること、休日には友人たちと琵琶湖畔までドライブに出かけるようになったこと。そして今日は、この春から始まる新しい就職活動のインターンシップのために、少し遠方まで通いやすい車への乗り換えを検討しに来たのだという。

「実は、去年、頭金なしで相談に乗ってもらったこと、本当に感謝しているんです。もし断られていたら、車を諦めていたと思うので」

美咲のその言葉に、さくらは胸が熱くなるのを感じた。この一年、守山店には様々な事情を抱えたお客様が訪れた。頭金を用意できなかった大学生、退職金の入金を待つ夫婦、フリーランスとして独立したばかりの女性、農業を営む青年、そして事故の恐怖を乗り越えようとする主婦。誰もが、それぞれの事情の中で、車という存在と向き合ってきた。

黒田店長も、事務所からその様子を見守っていた。この一年間を振り返ると、守山店には本当に多くの人生の節目が持ち込まれた。田中整備士は変わらず、一台一台の車と丁寧に向き合い続けていたし、中村結衣は数字の向こうにあるお客様の暮らしを、いつも大切に考えてきた。

「一年前とは、見違えるように頼もしくなりましたね」

黒田がそう声をかけると、美咲は照れくさそうに笑った。

「あの時、皆さんが親身になって話を聞いてくれたから、今の私があると思っています。就職したら、いつかまた、今度は新しい車を買いに来ますね」

さくらは、美咲の新しい車探しの相談に乗りながら、改めて実感していた。守山店が大切にしてきたのは、単に車を売ることではない。お客様一人ひとりの暮らしに寄り添い、無理のない形で、その人の次の一歩を後押しすること。頭金があってもなくても、過去にどんな事情があっても、まずは話を聞くこと。それが、この一年を通じて、店全体が改めて確認してきた原点だった。

雪はやがて小雨に変わり、窓の外には薄日が差し込み始めていた。美咲は新しい車の相談を終え、店を後にする際、もう一度深く頭を下げた。

「また何かあったら、絶対にここに相談に来ます」

その後ろ姿を見送りながら、さくらは隣に立つ黒田に、静かに呟いた。

「この一年、本当にいろんな方に出会いましたね」

黒田は頷きながら、駐車場に停められた展示車の列に目を向けた。

「これからも、変わらずにやっていこう。頭金があってもなくても、どんな事情のお客様であっても、まずはしっかり話を聞く。それが、この守山店らしさなんだと思う」

雪解けの水たまりに、薄日が反射してきらきらと輝いていた。守山店の一年は、こうして静かに、しかし確かな手応えとともに、次の季節へと引き継がれていった。これからも、この店には、様々な事情を抱えたお客様が訪れるだろう。そのたびに、スタッフたちは今日と同じように、丁寧に耳を傾け、無理のない一歩を、共に探し続けていくのだった。

――了――

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