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スタッドレスではなくチェーンを履いた方が良い状況と理由

スタッドレスタイヤとチェーンの違い

冬用タイヤとして一般的に使用されるスタッドレスタイヤは、雪道や凍結路面での安全性を高めるために設計されています。一方、チェーンはさらに厳しい条件下での使用を想定した補助具であり、極限の環境で効果を発揮します。この二つの違いを理解することで、チェーンを装着すべき状況を判断する助けとなります。


スタッドレスタイヤの特徴と限界

スタッドレスタイヤは特殊なゴムとトレッドパターンを使用し、以下のような効果を発揮します。

  • 柔らかいゴム素材
    低温でも硬化しにくい特殊なゴムを使用しているため、雪道や凍結した路面で優れたグリップ力を発揮します。
  • トレッドパターン
    氷や雪をしっかり噛むように設計された溝があり、特に圧雪状態の路面で効果を発揮します。

ただし、スタッドレスタイヤにも限界があります。例えば、以下のような状況では十分な効果を発揮できない場合があります。

  1. 急な登坂や降坂
    特に凍結した急斜面では、スタッドレスタイヤだけではスリップするリスクがあります。
  2. 新雪や圧雪の厚い積雪
    スタッドレスタイヤのトレッドパターンが雪を捉えきれず、タイヤが空転する可能性があります。
  3. アイスバーン
    薄い氷の層ができたアイスバーンでは、スタッドレスタイヤの性能が限界を迎えることがあります。

チェーンを履いた方が良い状況と理由

スタッドレスタイヤの限界を超えた過酷な条件下では、チェーンを装着することが求められる場合があります。以下に具体的な状況とその理由を説明します。

1. 急な斜面での走行時

急な坂道は、車両が上り下りする際に非常に高いグリップ力が求められます。特に、凍結した斜面や新雪が積もった場合、スタッドレスタイヤだけではタイヤが空転して前進できない、または制動距離が伸びる危険性があります。チェーンを装着することで、タイヤが物理的に路面を掴むため、安定した走行が可能になります。

2. 深い新雪やラッセル状態の道路

大雪で道路が完全に覆われている場合や、車の下部が雪に接触する「ラッセル状態」では、タイヤが雪に埋もれてしまい、空転する危険性があります。このような場合、チェーンのトラクション効果によりタイヤが雪を掴むことで、走行が可能になります。

3. アイスバーン(氷結路面)

アイスバーンはスタッドレスタイヤでも非常に滑りやすく、最も危険な路面条件の一つです。チェーンの金属部分が氷を直接引っ掻くことで、グリップ力が飛躍的に向上します。このため、チェーンは特にアイスバーン対策として有効です。

4. 積雪地帯での緊急時

積雪が深い山道やスキー場のような交通が少ない場所では、除雪が十分に行われていないことがあります。スタッドレスタイヤだけでは前進できない状況でも、チェーンを使用すれば安全に移動できる可能性が高まります。

5. 法律や規制による装着義務

日本国内の特定地域では、積雪や凍結時にチェーン装着が義務付けられている場合があります。例えば、国土交通省が指定するチェーン規制区間(チェーン装着が必須となる道路)では、スタッドレスタイヤだけでは通行が許可されません。このような場合には、チェーンが安全だけでなく法的にも必要になります。


チェーンを装着する際の注意点

  1. 装着前に練習する 実際に雪道でチェーンを装着するのは手間がかかります。事前に装着の練習をしておくことで、緊急時にもスムーズに対応できます。
  2. 適切なサイズのチェーンを選ぶ 車両に適合するサイズのチェーンを使用することが重要です。不適切なサイズは装着が難しいだけでなく、走行中に外れるリスクもあります。
  3. 低速走行を心がける チェーン装着時は車両の挙動が通常とは異なり、スピードを出すと危険です。一般的に時速30~50km/h程度を目安に低速走行を心がけるべきです。
  4. チェーン装着時は乾燥路面を避ける 乾燥した路面でチェーンを使用すると、チェーンやタイヤが損傷する可能性があります。路面状況を確認し、不要になったら速やかに取り外すようにしましょう。

まとめ

スタッドレスタイヤは雪道や凍結路面で非常に有効な装備ですが、急斜面や深雪、アイスバーンなどの過酷な条件では限界があります。こうした状況下では、チェーンを装着することで安全性が大幅に向上します。また、一部の地域や道路では法律や規制によってチェーン装着が義務付けられる場合もあるため、事前に情報を確認しておくことが重要です。

冬のドライブでは、常に路面状況や天候を確認し、必要に応じてチェーンを活用することで、より安全な移動を実現できます。スタッドレスタイヤとチェーンの特性を正しく理解し、状況に応じた使い分けを心がけましょう。