庄司紗矢香という祈り ― バッハ無伴奏ソナタに宿る静けさ

庄司紗矢香さんが奏でる「バッハの無伴奏ソナタ」。

私はもう、何百回と聴いてきました。
それでも、聴くたびに心が立ち止まります。
まるで初めて聴いた日のように、
新しい風が胸の奥を通り抜けていくんです。

彼女のバッハには、装飾も演出もない。
ただ“音そのもの”がそこにある。
弓が弦に触れる一瞬の呼吸、
音が生まれようとする瞬間の震え。
そのかすかな擦れが、
人が生きるということの儚さや温もりを思い出させてくれる。

彼女の音には、沈黙がある。
音と音のあいだの、あの透明な空間。
そこに、バッハの祈りが静かに漂っている気がする。
「音楽は、神に捧げるもの」
そんな作曲家の想いを、彼女は無理に語らず、
ただそのままの形で受け止め、そっと差し出している。

何度聴いても新しい発見があるのは、
彼女の中で音楽が“進化”しているからではなく、
聴く私たちが、その音に映し出されて変わっていくからなのかもしれない。
彼女の音は、鏡のように心を映す。
その時々の自分の心の色が、
バッハの旋律に溶けて、そっと返ってくるのです。

庄司紗矢香さんの音楽は、
静けさの中にある“強さ”を教えてくれる。
叫ばずに、語らずに、ただ誠実に音と向き合う。
その姿勢が、音楽という言葉を超えて、

聴く人の人生の奥深くに届くのだと思う。

興味のある方は極少ないと思いますが、試しに聞いてみてくださいね。

イヤフォン、ヘッドフォン推奨です。

バッハ シャコンヌ ‐ 庄司紗矢香 ( bach chaconne - sayaka shoji )