庄司紗矢香という祈り ― バッハ無伴奏ソナタに宿る静けさ
2025/10/24
庄司紗矢香さんが奏でる「バッハの無伴奏ソナタ」。
私はもう、何百回と聴いてきました。
それでも、聴くたびに心が立ち止まります。
まるで初めて聴いた日のように、
新しい風が胸の奥を通り抜けていくんです。
彼女のバッハには、装飾も演出もない。
ただ“音そのもの”がそこにある。
弓が弦に触れる一瞬の呼吸、
音が生まれようとする瞬間の震え。
そのかすかな擦れが、
人が生きるということの儚さや温もりを思い出させてくれる。
彼女の音には、沈黙がある。
音と音のあいだの、あの透明な空間。
そこに、バッハの祈りが静かに漂っている気がする。
「音楽は、神に捧げるもの」
そんな作曲家の想いを、彼女は無理に語らず、
ただそのままの形で受け止め、そっと差し出している。
何度聴いても新しい発見があるのは、
彼女の中で音楽が“進化”しているからではなく、
聴く私たちが、その音に映し出されて変わっていくからなのかもしれない。
彼女の音は、鏡のように心を映す。
その時々の自分の心の色が、
バッハの旋律に溶けて、そっと返ってくるのです。
庄司紗矢香さんの音楽は、
静けさの中にある“強さ”を教えてくれる。
叫ばずに、語らずに、ただ誠実に音と向き合う。
その姿勢が、音楽という言葉を超えて、
聴く人の人生の奥深くに届くのだと思う。
興味のある方は極少ないと思いますが、試しに聞いてみてくださいね。
イヤフォン、ヘッドフォン推奨です。

